東京都市大学オーストラリア留学プログラム (TAP)

東京都市大学
オーストラリアプログラム


レポート

REPORTTAP 留学中の学生による
特派員レポート

REPORT
2026.04.30
Vol.716
留学生活の”中だるみ”と向き合った日々
藤本 櫂
メディア情報学部 社会メディア学科

 *サムネイル画像は「Japan Festivalのリーダーも務めたり(本当に大変だった…)」

帰国まで残り1か月となった今、ようやく自分の留学生活を落ち着いて振り返る余裕が生まれた。ここまでの数か月は、振り返ればあっという間だったようにも感じるし、逆にとても長い時間を過ごしてきたようにも思える。不思議な感覚だ。留学という言葉に私は、常に刺激に満ちた冒険の連続だと思っていたけれど、実際はもっと静かで、もっと複雑で、もっと波のあるものだった。特にこの時期(3月)に訪れた、あの“中だるみ”の時期。あの時間こそ、私にとって留学の本質を考えるきっかけになった。 留学当初は、すべてが新鮮だった。朝起きて外に出るだけで、空気の匂いが違うことに驚き、街を歩けば聞こえてくる言語のリズムにワクワクし、授業で発言するだけで自分が少し成長したような気がした。スーパーで見たことのない商品を見つけるだけで小さな冒険だったし、バスに乗るだけで「異国で生活しているんだ」という実感が湧いた。毎日が特別で、毎日が挑戦で、毎日が“留学している自分”を強く意識させてくれた。 

しかし、3か月近く経過した頃、ふと気づいた。最近、心があまり動いていないことに。生活に慣れ、友達もでき、授業のスタイルにも順応し、英語での会話にもある程度の余裕が出てきる頃。最初の頃のような高揚感は薄れ、毎日が淡々と過ぎていく。朝起きて学校へ行き、授業を受け、友達と話し、帰宅して課題をする。その繰り返しが、いつの間にか“日常”になっていた。せっかく留学しているのに、こんな気持ちでいいのだろうかという焦りが、じわじわと胸の奥に広がっていった。 この“中だるみ”の時期は、単に刺激が減っただけではなかった。生活が安定してきたからこそ、見えてくる負荷もあった。英語でのコミュニケーションは慣れたとはいえ、完全に疲れないわけではない。授業の課題は徐々に難しくなり、友達との距離感も深まる一方で、気を遣う場面も増えてきた。日本とは違う生活リズムに合わせることにも、知らないうちにエネルギーを使っていた。そして何より、「もっと頑張らなきゃ」という自分へのプレッシャーが常にあった。留学している以上、毎日を充実させなければいけない、成長しなければいけない、そう思い込んでいたのだと思う。 特に、「自分で全部コントロールしなければいけない」という感覚は、日本にいた時よりも強く感じた。日本では、家族や友達、環境そのものが自然と支えてくれていた部分が多かったのだと、この時期になって初めて気づいた。留学先では、生活の細かいことまで自分で判断し、行動し、責任を持つ必要がある。どんな小さなことでも、自分で決めなければいけない。その積み重ねが、知らないうちに心の疲れとして蓄積していたのだと思う。

そんな中で、私は大きな変化を求めるのではなく、小さな行動を積み重ねることを意識した。新しいカフェに行く、普段とは違うルートで学校に行く、道端ですれ違う人、店員や先生に勇気を出して話しかけてみる。ほんの少しの変化でも、日常の景色が変わり、気持ちが軽くなった。「新しいことをする」ことが、留学の原点を思い出させてくれた。 また、“できていないこと”ではなく、“できるようになったこと”に目を向けるようにもした。留学中はどうしても、もっと話せるようになりたい、もっと積極的にならなきゃと、足りない部分ばかりに目が向きがちだ。でも、ふと立ち止まってみると、最初より英語が聞き取れるようになっていること、友達と自然に笑い合えるようになっていること、一人で生活を回せていること、そんな“できていること”が確かに増えていた。自分の成長を認めることは、思っていた以上に心を軽くしてくれた。 さらに、日本との距離感を調整することも大切だった。日本の友達や家族と話すことは大切だが、話しすぎると気持ちが日本に戻ってしまい、現地での生活に集中できなくなることがあった。そこで私は、話したい時に話すけれど、依存しすぎないという距離感を意識した。そのおかげで、現地での生活に気持ちを向けやすくなり、日常の小さな出来事にも再び目が向くようになった。 

今振り返ると、中だるみの時期は決して悪いものではないと思える。むしろ、生活が自分のものになってきた証拠だったのだと思う。最初の数週間のような刺激的な日々は確かに楽しい。でも、留学の本当の価値は、慣れた後の自分とどう向き合うかにあるのだと、今は感じている。中だるみの時期を経験したからこそ、自分の弱さ、自分の癖、自分の限界、そして自分の立て直し方を知ることができた。それは、語学力以上に大きな収穫だった。 留学は、ずっと楽しいわけでも、ずっと大変なわけでもない。波があって当然だ。中だるみの時期が来ても、それは失敗ではなく、誰もが通る自然なプロセス。大切なのは、その波をどう受け止め、どう自分を立て直すか。残り1か月、私もこの経験を胸に、最後まで自分らしく過ごしたいと思う。そして帰国後、この経験がどんな形で自分の中に残るのか、次回、最後のレポートで何を語れるのか。自分自身にも期待をしようと思う。